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私が今「夢中」になっていることを書きます。


by kenyag
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「碁を打つ女」の話。

囲碁の本
「たとえ言葉を交わさなくても、石を打つ音を聞けば、あなたの心がわかる」といったような内容の帯と、タイトルに珍しく「碁」が入っていることから、昨年購入してみた小説です。

 物語は、満州を舞台にした、日本人将校と中国人女性のかなわぬ恋の話。といえば普通のラブストーリーのようですが、実際には戦争を舞台にした話であることから、盤上以外にも「生き死に」の話が多く、とても生々しいです。
 
 小説全体が囲碁の対局のように組み立てられています。偶数の章は、日本人将校の視点で書かれており、奇数の章は中国人女性からの視点で交互に書かれていて、黒から打って、次に白の番というように、まさに対局のようになっています。構成も、最初は二人の接点は、ほとんどない(まるで布石のように)のですが、本の中盤から二人が出合って対局を通じてお互いを理解していき、最後は一気にクライマックスになっています。

 作者はもともと詩人と言うこともあってか、少ない言葉で的確に状況を描写しているところや、日本人男性がどのように当時の中国のことを見ていたのか、など非常に客観的に書かれているところは、私には驚きでした。

 思えば、囲碁用語にも「生かす」「殺す」など一見物騒なものがありますが、囲碁って、実際にはできないことを、盤の上で疑似体験しているのかな、と思うときがあります。この小説の中でも何度も対局シーンが描かれていますが、戦時にあることもあってか、盤上の激しい戦いのシーンが皮肉にも一番平和なシーンに感じられます。

 あまり小説は読まないクチですが、この本に関しては、非常に感銘を受けました。また読み返してみたいと思います。また、碁を楽しまれる方なら、きっとグッとくる言葉がいくつかあるはずです。(碁打ちにはよくわかる、心理描写みたいなものも書かれています。)
 ということで、お勧めの一冊です。
by kenyag | 2005-03-04 21:36 | 囲碁関連